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   埼玉県ペット遺体遺棄事件
 
       埼玉県ペット遺体遺棄事件 読売新聞 2010年4月8日
             読売新聞 2010年4月8日


別の骨飼い主に渡す

ペット投棄容疑者逮捕 詐欺でも捜査


 埼玉県飯能市の山林に犬など約100匹の死体が捨てられていた事件で、県警は7日、同県三芳町藤久保、元町議の「花園ペット祭典」経営阿部忍容疑者(71)を廃棄物処理法違反(不法投棄)容疑で逮捕した。阿部容疑者は「死体を火葬して骨にして返す」と飼い主に約束しながら、
預った死体を繰り返し不法投棄し、偽って別の骨を渡していたという。県警は詐欺罪の適用を視野に、営業実態の解明を進める。

 発表などによると、阿部容疑者は3月30日の朝、同県川口市の女性(80)から葬儀などを依頼された、小型犬のパピヨンの死体を飯能市坂元の山中に捨てた疑い。

 県警幹部によると、依頼を受けた阿部容疑者は3月19日、飼い主の女性宅を喪服で訪問。「供養、火葬、遺骨返納のセット料金」として現金1万8000円を受け取ると、
黒いワゴン車の荷台に積んだ祭壇を使ってその場で10分程度、録音したお経を流すなどした後、死体を持ち帰った。よく20日、再び女性宅を訪れ、別の犬の骨を入れた骨つぼを女性に手渡したという。

 調べに対し、阿部容疑者は「別の業者に委託して火葬すると、手元に1000円程度しか残らない。火葬経費などを浮かせるために投棄した。悪いと思いながらやってしまった」と供述。タウンページの広告には
「火葬炉完備」とうたって顧客を募っていたが、実際には所有していなかった。13年前に葬儀業を始めたと話しているという。

 阿部容疑者は1983年に三芳町議に初当選し、通算3期12年務めたが、99年以降は3回連続して落選している。




 
   埼玉県ペット遺体遺棄事件 朝日新聞 2010年4月9日
           朝日新聞 2010年4月9日

「ウチの子 骨返して」

埼玉ペット死体 ずさん葬儀


 埼玉県飯能市の山林で、ペットとみられる多数の犬や猫の死体が捨てられているのが見つかった事件。逮捕されたペット葬儀業者は火葬施設を持たず、飼い主から預かった死体を次々に捨てていた。どんな手口で飼い主の悲しみにつけこんでいたのか。

 「今すぐ行きます!24時間対応してますから」
埼玉県川口市の会社員岡本直一さん(48)は2年前、飼い猫を病気で失った。すぐに葬儀業者に依頼しようと、電話帳で探したが、午後遅い時間で、どこも対応してくれない。たどりついたのが、阿部忍容疑者(71)の「花園ペット祭典」=同県三芳町=だった。電話すると、2時間後にワゴン車でやってきた。

 阿部容疑者は黒の礼服姿。
電話帳の広告には「火葬 5000円〜」「納骨無料」などと安さがアピールされていたが、最初に提示してきた費用は6万円。岡本さんが渋ると、あっさり、「なら、1万円でいいです。ただし遺骨は提携する寺の共同墓地に埋葬します」「火葬の立ち会いはできませんが、2万円追加すれば遺骨を持ってきます。」次々に条件を変えたという。

 交渉がまとまると、すぐに葬儀が始まった。阿部容疑者は作務衣に着替え、線香と数珠を用意。テープで念仏が流れる中、ワゴン車内に置かれた祭壇に向かって手を合わせた。20分ほどで終わると、「サービスで戒名もつけましょう」と笑顔を見せた。

 2日後。高さ15センチほどの白色陶器の骨つぼと、「ニヤーさんの霊永眠」と書かれたお札を持ってきた。岡本さんは骨つぼとお札を大切に保管してきた。だが、今となっては本当に愛猫の骨なのか分からない。「とにかく、うちの子だと確認できる骨を返してほしい」

 阿部容疑者は三芳町の元町議。1983年に初当選し、その後、計3期12年を務めた。97年ごろからは町議のかたわらペット葬儀業「花園ペット祭典」を個人で始めた。
タウンページに大々的に広告を載せ、火葬、納骨まで引き受けると宣伝。ただ、火葬施設は所有せず、別の業者に委託することにしていた。

 だが、火葬を依頼すれば、手元に残る利益はわずか千円ほどになることも。阿部容疑者は県警の調べに「金を浮かせたかった」と話しているという。


悲しみつけ込む■顔色見て7万円

 全国ペット葬祭業協会(横浜市、加盟50社)などによると、全国にペット葬儀業者は500〜600社あるとみられるという。

 だが、ペットブームで、飼い主の気持ちにつけ込む悪質業者もいる。国民生活センターに寄せられた「ペットサービス」に関する苦情や問い合わせは435件(08年度)。葬儀関係では「火葬場に同行しようとしたら『来ないでくれ』と言われた」「葬儀の途中で約束した値段をつり上げられた」など。

 関東地方のあるペット葬儀業者は「料金設定はあってないようなものだ」と打ち明ける。例えば、
「七五三」方式と呼ばれる商法があるという。業者は飼い主の顔色をうかがい、火葬されたペットの前で割り切った表情を浮かべていると3万円、少し涙を浮かべていると5万円。大泣きしていると7万円までつり上げるという。

 また、トラブルの最大の要因は、ペット葬儀に関する法的な取り決めがないことだ。環境省によると、動物を販売するには登録がいるが、火葬・埋葬業の届け出などは不要。ペットの火葬業を新設するのに許可制を取っている自治体も少ないのが現状だ。

 では、ペットを失ったら、どうすればいいのか。方法の一つは、自治体に依頼すること。多くは飼い主からの連絡で引き受けている。手数料は千〜2千円が相場。無料の自治体もある。ただ、多くは「一般廃棄物」としてごみと一緒に焼却される。




 
   埼玉県ペット遺体遺棄事件 毎日新聞 2010年4月8日
           毎日新聞 2010年4月8日


埼玉・死骸100匹事件

ペット葬儀業元町議逮捕

不法投棄容疑「金浮かすため」


 埼玉県飯能市の山中に犬や猫など約100匹の死骸が捨てられていた事件で、県警は7日、同県三芳町藤久保、ペット葬儀業「花園ペット祭典」経営の元町議、阿部忍容疑者(71)を廃棄物処理法違反(不法投棄)容疑で逮捕した。家宅捜査で100人以上から葬儀の依頼を受けた記録が見つかっており、ほかにも不法投棄を繰り返していたとみて調べる。

 容疑は3月30日ごろ、飯能市坂元の正丸峠につながる県道のがけ下に、川口市内の女性(80)から火葬依頼を受けた小型犬のパピヨンを1匹捨てたとしている。火葬代金などとして1万8000円を受領。調べに対し
「金を浮かせたかった」と供述し、容疑を認めている。

 県警は代金を受け取りながら火葬をしなかったケースは、詐欺容疑に当たる可能性もあるとみて捜査する。

 阿部容疑者は、83〜99年にかけて、三芳町議を計3期務めた。97年ごろに個人で「花園ペット祭典」を開業。電話帳に「御引き取りから納骨・霊園まで」などと広告を出し、1匹あたり8000〜6万円で葬儀と火葬を請け負っていた。

 葬儀はワゴン車の後部荷台に設営した祭壇で、お経をテープで10分程度流すものだったという。火葬施設は持っていなかったが、広告には「火葬炉完備」とうたっていた。

 県警は3月9日、県から
「犬や猫の死骸が捨てられている」との通報を受けて捜査を開始。パピヨンをくるんでいたタオルが川口市の自治会制作のものだったことから、女性が依頼したと判明した。今年2月に「死骸が大量に捨てられている」との通報が飯能市にあり、市は3月11日に現場付近に監視カメラを設置。阿部容疑者とみられる人物の姿と車が撮影されていた。

行政監視追い付かず

 ペット葬儀業をめぐっては、埼玉県の場合、一定レベル以上の焼却施設を備えた業者は生活環境保全条例などに従い届け出が必要だ。しかし、阿部容疑者のように火葬施設を持たない業者については、行政による規制やチェック機能がなく野放しになっている。

 阿部容疑者が経営する「花園ペット祭典」は首都圏で客の依頼を受けていた。県内のある業者は6、7年前、面識のなかった阿部容疑者から電話で火葬を頼まれたが断った。「『月に50〜60匹お願いしたい』と言われた。大がかりな商売をしているとびっくりした」 阿部容疑者の自宅近くの女性は十年前に犬の葬儀を依頼した。「遺骨は返ってこず、変だなと思った」と振り返る。




 
        埼玉県ペット遺体遺棄事件 中日新聞 2010年4月8日
             中日新聞 2010年4月8日


ペット葬祭業者を逮捕

火葬約束の死骸、廃棄疑い 埼玉県警


 埼玉県飯能市の山林に大量の犬などの死骸が捨てられていた事件があり、埼玉県警は七日、廃棄物処理法違反の疑いで、同県三芳町藤久保、動物葬祭業の元同町議阿部忍容疑者(七一)を逮捕した。県警は三月末、現場周辺で約百匹の死骸を回収しており、関連を調べる。

 逮捕容疑では、三月二十六日から三十一日の間に、飯能市坂元の山林に小型犬一匹の死骸を捨てたとされる。県警によると、容疑を認め「悪いと思いながらやってしまった。火葬業者などへ払う費用を浮かせたかった」と供述している。

 捨てられた犬は同県川口市の無職女性(八○)が三月十九日、阿部容疑者に一万八千円で葬儀を依頼。犬をくるんだタオルに女性の地元自治会名が書かれており、飼い主が判明した。阿部容疑者は女性に
「火葬する」と約束していたが、実際には行っておらず、県警は詐欺にあたる可能性もあるとみている。

 阿部容疑者は十三年ほど前から個人で「花園ペット祭典」を経営。県内や東京都内の客から五千〜六千円程度で請け負っていた。

 電話帳の広告には「火葬炉完備」と載せているが火葬設備はなく、業者に依頼していた。県警が七日に捜査した際、自宅や車には数匹の犬の死骸があったという。

 阿部容疑者は一九八三年に同町議に初当選し、落選期間を挟み、九九年まで三期務めていた。

業者急増、苦情絶えず

 ペットブームを背景として全国各地でペット葬祭業者が急増する半面、
悪徳業者をめぐるトラブルが後を絶たない。

 ペット関連書籍を出版する「野生社」(東京)の調査では、ペット葬祭業者は最近二十年で四倍に増え、今年は全国で約八百三十社が確認されている。

 環境省などによると、死んだペットは家庭ごみと同じ「一般廃棄物」として扱われる。しかしペットを家族と同様に「埋葬したいと思うニーズは増えている」(葬儀業者)。業者のサービスは多様で、火葬車で自宅に赴き火葬したり、僧侶が自院で読経し供養したりする例もある。「費用は二万〜五万円程度」(同業者)という。

 一方で
国民生活センターによると「渡された骨つぼにお骨が入っていなかった」「当初の説明より、代金を多く請求された」といった苦情は絶えない。

 環境省によるとペット葬祭業者を規制する法律はない。



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