今年多く起こった動物虐待が記事になっています。“たかが動物虐待では済まされない”理由が専門家の先生のコメントで書かれています。
動物虐待が相次いでいる。警察庁が動物愛護法違反容疑での摘発件数の統計を取り始めた2010年は33件だったが、14年には48件と1・5倍に増加。今年も各地で被害が出ている。動物を傷つける行為は殺人など凶悪事件の前兆との専門家の指摘もあり、全国の警察は摘発に力を入れている。
感電頭に矢 「幼い頃から動物が嫌いだった」。大阪府阪南市でハムスター5匹を殺したとして動物愛護法違反に問われ、大阪地裁堺支部で今月20日、有罪判決を言い渡された同府内の男子大学生(20)は、公判で動機をそう述べた。
判決などでは、大学生は14年7月~今年5月、ハムスターを害虫駆除の器具で感電させ、胴体に木ねじを打ち込むなどした。ハムスターは当初から殺す目的で購入したといい、知人3人も関与していた。
警察庁は「社会的関心が高まっている」として10年から、動物愛護法を適用した動物虐待の摘発件数をまとめている。10年は33件で、11、12両年は各29件とやや減ったが、13年は36件、14年は48件と増加。一つの事件で複数の動物に危害が加えられることが多く、手口も、刃物で切られるほか、生き埋めなど悪質なものが多い。
動物虐待は対象や内容によって、別の法律が適用されるケースもある。兵庫県伊丹市の昆陽池で10~11月、頭などに矢が刺さったカモ類4羽が見つかった事件では、カモはペットでないことなどから、同県警は鳥獣保護法違反容疑で捜査。他人のペットを殺傷した場合、警察は被害者感情も考慮し、動物愛護法より懲役刑の上限が重い器物損壊容疑で捜査することもある。これらの事件すべてをまとめた統計や、被害事例そのものの全国的なデータはないという。
神戸と佐世保 動物虐待の背景について、影山任佐・東京工大名誉教授(臨床犯罪学)は「幼い頃にいじめや虐待などで強いストレスを受けると、自分や他人を『大事にする』という気持ちを持てず、身近で弱い存在の動物を攻撃することがある。攻撃そのものに喜びや快楽を感じている場合は、残虐性が増し、重大事件を起こす危険性も出てくる」と指摘する。
14歳の少年が逮捕された1997年の神戸市連続児童殺傷事件では、医療少年院(現・第3種少年院)送致を言い渡した神戸家裁の決定要旨によると、少年は、小学5年の頃にナメクジやカエルの解剖を始め、その後、猫も解剖するようになった。長崎県佐世保市で14年に起きた高1女子生徒殺害事件でも、第3種少年院送致となった同級生の少女は、猫を殺すことでは満足できなくなり、事件に至ったとされる。
警察対策強化 警察庁は13年8月、「社会的反響が大きく、国民に不安を与える」として、全国の警察本部に、傷ついた動物を発見した場合、速やかな保護と容疑者の摘発を指示。翌月には動物愛護法が改正施行され、殺傷した場合の罰則が「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」に引き上げられた。
兵庫県警は14年1月、動物虐待の通報を受け付ける専用電話「アニマルポリス・ホットライン」を開設。同年中に194件の情報が寄せられ、情報を基に、猫をエアガンで撃っていた児童2人を補導するなどした。
大阪府警も同年から、動物の死体に刃物で切られた形跡がないかなどの検証を専門家に依頼するとともに、防犯カメラのチェックや張り込みを強化。猫を殺害し、動画撮影していた男を逮捕するなどしている。
弱者守る教育を
虐待されて見つかった動物は命が助かったとしても、体の一部が切断されていたり、人が手を動かしただけで身を縮めたりするなど、深刻な後遺症を抱えることになる。
捨てられた犬や猫などを保護し、治療するとともに新しい飼い主を探す大阪府能勢町の公益財団法人「日本アニマルトラスト」には毎年10匹前後、虐待が疑われる動物が持ち込まれる。同法人は3年前、小型犬「カニンヘンダックス」(雌、7歳)を保護。飼い主の交際相手にたたかれたり壁に投げつけられたりして、保護時、頭の骨が折れ、目は見えず、移動も困難な状態だった。
同法人スタッフの加賀爪啓子さん(39)は「警察の摘発は被害抑止につながる」としたうえで、「子供の頃から弱い立場の動物を守る意識を育むための教育や、動物をすぐに保護する仕組み作りが必要」と訴える。
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